<問題>
自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
- 買主Bが被保佐人であり、保佐人の同意を得ずにAとの間で売買契約を締結した場合、当該売買契約は当初から無効である。
- 買主Cが意思無能力者であった場合、Cは、Aとの間で締結した売買契約を取り消せば、当該契約を無効にできる。
- 買主である団体Dが法律の規定に基づかずに成立した権利能力を有しない任意の団体であった場合、DがAとの間で売買契約を締結しても、当該土地の所有権はDに帰属しない。
- 買主Eが婚姻している未成年者であり、当該婚姻がEの父母の一方の同意を得られないままになされたものである場合には、Eは未成年者であることを理由に当該売買契約を取り消すことができる。
<解説>
- 誤
∵ 自己所有の土地を売却は、「不動産」に関する権利の特喪を目的とする行為(13条1項3号)に該たります。
したがって、保佐人の同意がない場合、被保佐人のなした行為は取り消しうるものとなります。(13条4項)。
本肢では、「無効である」としており、この点が誤りとなります。
過去問に出題がありますね。
- 誤
∵ 意思能力者のした行為は当然に無効となります。
したがって、取消の問題は生じません。
本肢では、「取り消せば、無効とできる」としており、この点が誤りとなります。
これも過去問に出題がありますね。
- 正
∵ 判例によれば、本肢のような権利能力なき社団Dに関する権利義務は、その構成員に総有的に帰属するとされています。
したがって、「当該土地の所有権はDに帰属しない」とする本肢は、正しいことになります。
本肢は過去問に出題はないと思います。
- 誤
∵ 未成年者が婚姻したときは、これによって成年に達したものとみなされます(753条)。
とすると、本肢でEは成年者として扱われるので、未成年者取消はできないようにも思えます。
ここまでは、過去問の知識です。
悩むのは、当該婚姻がEの父母の一方の同意を得られないままになされたものである場合の部分をどう考えるかでしょう。
民法744条は取消しうる場合から、未成年者の父母の同意を得られない場合を除外しています。
そこで、本肢でも、Eの婚姻は取り消しうるものとはなりません。
したがって、婚姻を取り消せない以上、Eはやはり成年者として扱われることになります。
とすると、「Eは未成年者であることを理由に当該売買契約を取り消すことができる」とする点が、誤りとなります。
<正解>3
<雑感>
過去問を勉強していると、選択肢3か4で迷うはずです。
選択肢3と4の知識は、宅建の過去問には出題がないからです。
では、どうしましょう?
2択だから、運に身を任せるのも一つの方法でしょう。
ただ、ちょっと立ち止まって考えてみてください。
民法は権利の帰属主体として何を考えているのでしょうか?
そう、人ですよね。
ここでいう人とは、自然人と法人を意味します。
とすると、自然人と法人以外に権利義務は帰属しないのです。
とすれば、法人でない「任意団体」には権利義務は帰属しないことが分かります。
この超基本的な事項が思い出されば、選択肢3を正しいものとして選ぶことができるはずです。
でも、過去問のみの勉強だけだと難しいか・・・。
どうでしょう?
法学部出身の方、他の資格試験の勉強をされている方は、権利能力なき社団についてもご存知でしょうから、本問は当然できる問題です。